おととい、いつものように宿題に関してけんかしていた際に、ティラノが「おかあさんはコントロールしたいんでしょう!」と叫んだので、ショックを受けた。わたし自身が同じようなセリフを思春期のときに母にぶつけた記憶があったから。宿題の呪縛に苦しんでいるのは子供も親も同じ。さっさと義務を果たしてしまって楽になりたい母親と、苦しみは少しでも先延ばしにしたい子とのぶつかりあいだ。

もうoverwhelmingなので、自分で何とかしようとするのをやめることにした。育英の宿題は日曜にトリケラに見てもらって(http://d.hatena.ne.jp/ryasuda/)、現地校の宿題に関しては、今週は試しにわたしが宿題やれ、宿題やれと言うのをやめて、本人に任せることにした。

運良くだか、運悪くだか、進研ゼミの10月号がきていて、楽しい計算機がついていたので、ティラノはゲーム感覚での掛け算演習に夢中になってしまった。「スコミムス、ESLの宿題やった?」などと婉曲的に”宿題やらないといけないよ”というメッセージを伝えていたつもりなんだけど、ティラノは無視。夕食を終える頃には、この暗黙の戦争に疲れ果ててしまった。すごーく腹が立ったんだけれども、おしりをへなっとたたいても「児童虐待」になってしまうこの国で、「おしりペンペン」のひとつもできやしない。腹の中で溶岩が煮えくり返っているのを、ぐぐぐっと抑え込んだ。でも怒りが消えるわけではないので、食事以降の入浴、歯磨きなどの世話を放棄(これもネグレクト=虐待)して、せいぜい寝たふりを決め込んだ。

この状態はやっぱりアブナイ感じがしたので、意を決して、保険会社の無料の電話相談にヘルプを求めた。最初に出た看護師さんはたまたまPsychiatric Nurseの訓練を受けている人で、落ち着いた声でよく話を聞いてくれた。自分ではDepressしていると思うんだけど、専門家にかかったほうがいいかどうかを相談したい、といって話を切り出した。「どのくらいの期間depressしているの?」という質問に、2000年の秋に日本からアメリカにやってきて、、、と答えたら、「日本から!地球の反対側からやってきて、それだけでも大きな生活の変化で、大変なことよ。それに日本って、こことは全然違う世界でしょう。それは、すごくストレスのかかることよ」と言ってくれた。自分の側に立って、「たいへんね」って言ってもらえるだけでも嬉しくて、それだけでもう泣けてきてしまった。子供が3人いて、お稽古事に連れまわしたり、2年生の子に宿題(現地校+育英)をやらせたり(子供がヒステリーを起こすとわたしも連鎖反応してしまって、毎日大騒ぎ!)、来年引越しを予定していたり、といった現状を話した。この人はじっくり話を聞く役割なのではなく、病気全般を対象に、電話してきた保険の顧客に簡易対処法を示すのが仕事なので、マニュアルに沿って質問をしてくる。"Do you feel like hurting yourself?" と聞かれて、わーっと悲しくなっちゃって"Sometimes, I have suicidal thoughts."と答えた。"How would you do it?" "I have no plans. I just wish I could." "You wish you could..." それで、明日の朝にでもすぐに専門家にかかるようにと言われた。ちゃんと電話すると思うかと尋ねられたけど、たぶんしない、と答えた。そしたらメンタルヘルスカウンセラーに電話を回してくれた。次にでたカウンセラーは、うって変わって血気盛んな感じの若い女の子。「自分では医者にいいかなとときどき思ったんだけど、ダンナは鬱病じゃないっていうんだよねー」と言ったら、「ダンナが言っていることは正しくないって、自分でもわかってんでしょー。彼等にはDepressionがわからないのよ!!!」とわたしのかわり(?)に怒ってくれた。言ってることはわかるんだけど、もう少し黙ってアタシにしゃべらせてくんないかしら。そうこうするうちにトリケラが帰宅したので、あわてて電話を切った。

トリケラが夕食を済ませ、床に着いた後も、わたしは眠れなかったので、また電話してみた。今度は事務的な感じの看護師が、メンタルヘルスのカウンセラーに電話をつないでくれた。今度のカウンセラーは最悪だった。わたしからどういった悩みかをざっと聞き出したところで、わたしにcognitive changeを促すセラピーを勝手にはじめてしまった。これこれ、こういうジレンマがあって、つらいんだけどみたいなことを言うと、「日本に帰れない状況になっているのに、日本に帰りたい、帰りたいって、そりゃ、ないものねだりなんだから、つらいわけだわよ。You have to change the way you think.」"have to" とかって言われちゃうと困っちゃうんだよね。頭でわかっていることでも気持ちがついていかないんで苦しいわけだから。子供のアイデンティティがどうなっちゃうのかってのが心配、って言ったら、「子供は将来言葉ができなくなったとしても、後から自分で興味を持ったりするし、伝統や文化について理解を深めながらJapanese-Americanになっていくのよ。Parents have to work hard on it.」なんて言ってくれちゃう。バイリンガル教育をするのがたいへんだって言ってんのに、その部分はあまり聞いていなくて、何々は親の責任だって、わたしにより一層負担感をかけてくる。気持ちが高ぶって「だって〜」と泣いたところで、たぶん監督者(訓練中のカウンセラーを指導する目的で、すべての会話をモニターしていたと思われる)が、君はもういいっていう指示を出したのだろう、急にマニュアルに沿ったような調子になって、電話越しではなく、直接面接できるカウンセラーを紹介してくれた。このカウンセラーはカウンセリングに大失敗していると思ったのに、それを相手にいえなかったのはちょっとくやしかったりするけど、ま、失敗しているのは明らかだったし、こんな風にカウンセラーを訓練しているんだなっていうのがわかって、おもしろかったかな。夜更かししちゃった。