海峡を渡るバイオリン

海峡を渡るバイオリン
以前に父が送ってくれていた本、『海峡を渡るバイオリン』(陳 昌鉉著、河出書房新社、1890円)を読み終えた。戦中、戦後の日本と朝鮮の関係の歴史、日本の中の人種差別、立身出世物語と、いろいろな意味でおもしろい本だった。特に印象深いのは著者の奥さんの存在。母親へのの思いが切々と語られているのと比べると、扱いが軽い感はあるけれど。バイオリン製作なんていうアヤシイ仕事をする人と、よく結婚してついていったなぁ。音楽家、画家などの”夢はあるけど、いつ成功するか知れない(しないかも知れない)”職業についている人の家族って大変そうだもん。陳さんは、天性のものもあるのでしょうけれど、それに加えて大変な努力をされている様子が描かれている。美しいニスの色を追求するのに、赤ちゃんのウ○チまで楽器に塗ってみるという試行錯誤の様子は、まるでサイエンティストの実験のようだと思った。
サイエンティストってのもアヤシイ職業。他のサイエンティストの奥様方がどのような思いで、ダンナ様方のお仕事を見守っておられるのか、伺ってみたいものだ。わたしは”チェンバロの上手なトリケラくん”にほれちまって10年前に結婚したんだけど、サイエンティストと結婚したつもりはなかったんだよね。K大の学部生だった頃、「ぼく、京大の大学院でも受けてみようかな」と言ったときには、「あなたは内部進学してきたから、中等部の受験以来、受験勉強というものをしたことがない。京大受験だなんて、大それたことを!この世間知らずめ」とあきれたものだった。アメリカの大学の医学部の先生になっちゃうなんて、考えもしなかったよ。