第二日目(4月12日)
 夕べのKankiの残りものの、牛鳥エビいりチャーハンで簡単に朝食を済ませて、10時にマーサのオフィスへ。昨日マーサと打ち合わせて、チャペルヒルを南北に走るエアポートドライブよりの2軒を見ることにしていたけれども、他に見るものも少ないしオフィスにも近いということで、Estes Driveで出ている家を覗くことに。この家は古いこともさることながら、大通りに面しているのでもともと眼中になかった。行って見たらボロ家だった。
 次にいよいよ有力候補のVirginia Driveの家へ。ここはなんといっても家と庭の広さのわりに値段が低く設定されているのがいいなと思っていた。車を降りてみたら、森の中に建っている家という感じがなんともよかった。小鳥が美しい声でさえずっていて、しっとりと空気が湿っていて(じめじめじゃないのよ)庭がきれいな四角で大きくて、子供たちをここで遊ばせたいなという感じ。家の中は、以前は賃貸にしていたものを売りに出すことにしたということで、いわゆるバイヤー受けするような魅力が足りない。でもわたしは他人の趣味でごてごてに装飾されていてその分値段が高いよりも、何もないところに自分の趣味のものを入れられて安い家のほうがいいと思っていた。半円状のドライブウェイも好印象。わたしはとても気に行ったけれども、トリケラの勤務先とローリーにある日本語補習校には遠いのが難点。こどもたちは住人のいない家の中を縦横無尽に走り回って楽しそうだった。庭にはたーくさん松ぼっくりが落ちていて、ティラノ、スコミムスは拾うのに忙しそうだった。
 次がすぐ近所のSummerlin Driveの家。ここは円でいうと500万くらいVirginia Driveよりも高い家。オーナーがちょうど引越しをする日とぶつかっていたようで、引越し屋さんの大型トラックが家の前に止まっていた。このオーナーの私物が全部なくなったところを一生懸命想像して、自分がここに住んだらどんな感じかと考えてみた。庭はいびつな形をしていて、方角もあまり気に入らなかったけれども、何しろオーナーが住んでいた家なので手入れはほどほどにできている(それでもバス、トイレには不満があったけど)。チラシによると、わたしがネットで見ていた値段よりも5000ドル値下げしていて、さらに、クロージングコスト(売買契約成立の際に一括して払う諸経費)を5000ドル負担してくれるという。それなら分相応の大きさの家に、分相応の金額になるわけで、なんだかしっくりしないものがあっても許せる範囲かなーと思い始めていたところでマーサが「この家、スラブよ。」スラブの基礎は建築する際には簡便だけれども、何かトラブルがあったときに修理が困難になるので、避けたいと思っていた。これで、この家が選択肢からひゅるりとはずれた。
 4番目に見たのはWayfarer Court。この家は予算をはるかに超えているけれども、長い間市場に出ているのを知っていたので、もしかして値段をさげる交渉ができるかもとかすかな希望をもって訪問した。この家はキッチンに大理石のカウンタートップとチェリーのキッチンキャビネットをいれた超高級仕様。ファミリールームには作りつけの真っ白なエンターテイメントセンターがあり、洗練された感じのライトが天井についていた。アメリカの家はフロアーランプで明かりをとるスタイルが多い。日本ではどの部屋も天井に電気がついていてそれに慣れているし、床にランプのコードがずるずるとあるのはじゃまで、こどもたちにも危ないのでフロアーランプ式はわたしは好きではない。その意味で、この家のファミリールームのライトが天井についているのはステキね。庭にはレンガ造りのデッキが。それ自体はステキだけれども、そのせいで庭のそれ以外の部分がつかいにくくなっているみたい。そもそも手が届かない値段だけれども、その上、この庭にはあまり魅力を感じないな。
 もう4軒見たけれども、これだ!という家に出会えていない。昼食の時間になって空腹だし疲れてもいたけれども、もう一頑張りしてClover Driveへ。この家は敷地がとても狭く、ほとんど家の面積分くらいしか自分のものにならないかわりに値段が低め。ネットの写真では隣家とくっついている長屋みたいな構造に見えたけれども、実際には一戸建てだった。家そのものはたっぷりと広いのはいいけれども、ただ間取りがわたしたちには使いにくい感じ。各寝室にフルバスルームがついているのが売りみたいだけれども、わたしたちの感覚ではただのスペースの無駄。そのスペースをつぶして、もう一つ寝室に使えたほうがいいのに。3つの寝室のうちの1つが一階にあるので、夫婦用、長男用、長女次女用の寝室のうちのどれか一つが他と離れることになる。もっと年が上の子供たちだったらそれでもいいかもしれないけれども、まだ小さいからそれはちょっと・・・。
 成果のあがらない家探しにくたくたになって、1時半から遅い昼食を摂った。前日敗退したSushi-Yoshiも今なら間にあうぞと駆け込んだ。店内はビニールっぽく見える畳を敷いたお座敷があったりして、しっかり和風。はー、疲れたね。お刺身のネタはぴちぴちに新鮮というわけではなかったけれども、これくらいならまあまあだ。こどもたちは抹茶アイスクリームで仕上げてご機嫌。
 さて午後に家探し再開。どうせ予算外の家を見るならと、もう一軒、勤務先に比較的近い物件Emory Driveを見てみることにした。ここは小学校へ徒歩圏。1900スクエアフィートと、今の我が家にはたっぷりサイズ。オーナーが建てた家だそうで、まだ一代しか所有者がいない。在宅だったオーナーの趣味がビシビシと伝わってくる家だ。魚が壁にかざってあったり、この地域には珍しい地下室はもう男の空間と言う感じ。ビリヤードがデンと置いてあり、工作機械やパソコンなどがガチャガチャガチャーと広い地下室を占領。洗濯機がないから、どうやらママはここには立ち入らないよう。地下室に下りる階段の造りが雑で、チビたち、特にグイには危ないな。庭には水はけの悪さを感じさせるドロドロとした水溜りが。そこがこの一帯の水気を集積しているようで、いい印象ではなかった。4寝室あるのは長所で、将来にわたって長く住める家ではあり、今の住宅市場や金利などを考えると買っておいてもいい家なのだけれども、どーうしてもその家に住みたい気持ちが起こらない。あのオーナーのおじさんのオーラが隅々まで行き渡っているような感じなのよね。それにマーサが、この家の外壁の材料について問題を指摘してくれた。「あの窓の下のところに、でこぼこしているところがあるでしょう。湿気がはいりこみやすい外壁だから、いつも気をつけていて、何かあったらすぐに修理する必要があるタイプなの。材料自体は安いけど、要はそれをする手間暇の問題ね。」この外壁を全部メンテナンスフリーな材料に替えるにはざっと$20,000くらいかかるとのことで、やっぱりこの家は買う気がしないな〜。
 結局6軒と、最後はEmory近辺の子どもが通う小学校に寄って見たけれども、決め手になる材料を欠いたまま終了。また翌朝10時にマーサと会う約束をして別れた。トリケラがデューク大学に顔を出しておきたいというので、わたしたちはホテルでおろしてもらった。
 どよ〜〜ん。どうすればいいのだろう。せっかく来たのだから、自分たちがリーズナブルだと思う金額でEmory Driveにオファーを出してみてあのおじさんがどうでるか様子をみてみるか、もう通勤に時間がかかるのをあきらめてVirginia Driveにオファーを出すか、それとも今回はすっぱりとあきらめるか。マーサにもし自分だったらどうするかと聞いてみたら「わたしならSummerlinにする。キッチンがとてもなごむ感じでいいという印象だったの。でもあなたたちは基礎が気に入らないから、選びたくないでしょうね。ま、マルティーニでも飲んで、ゆっくり考えてみて。」
 別にマーサの提案に沿ったつもりではないけれども、前夜夕食をとったKankiの寿司サイドで食べることにして、ウォッカをグレープジュースで割ったマルティーニを飲んだ。おいしかった。お寿司もおいしかった。
 寝室にテレビがあるという慣れない状況での二晩目、キングサイズのベッドに横になって、見るわけでも見ないわけでもなくナショナルジオグラフィックチャンネルを長時間つけっぱなしにした。トリケラは適当な時間に眠りに入ったようだったけれども、わたしは積極的にテレビを消すエネルギーがなくて、ただボーっとした。ああ、こうしている間に、新しい物件が市場に登場しているといいんだけど。わたしたちはどうなっちゃうの?
(明日に続く)




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