続編1

  • Earnest Money

 3日しかない家探し旅行の最終日に、飛行機にのる直前にオファーを出して、わたしたちはNYに戻った。本来オファーを出すときには、earnest money手付金を払わないといけないけれども、そんなのは常識で改めて言う必要もないと思ったのか、もともとの担当だった不動産エージェントのヴィッキーが注意を促すこともなかったので、わたしたちはチェックブック不携帯。持参した"Home Buying for Dummies"を読んでいて、チェックを切ることが話題になっているので現地ではじめてそれに気づいた始末。ピンチヒッターの不動産エージェントのマーサが、わたしが事情を説明しておくから、NYに帰ったら翌日にすぐ速達でチェックを送るようにという指示をだした。頼りになるぜ、マーサ。
 実際には、チェックのコピーをとり、それをマーサと、売り手の不動産エージェントにファックスした上で、チェックの現物を郵送するという作業になった。

  • Counter Offer

 オファーを出した当日、家のオーナーの教授は一日中会議かなにかで連絡がつかないということだった。翌日の朝、オーナーが「家にダメージを与えそうなくらい建物の近くに生えている2本の木を切り倒すこと、ホームウォランティをつけること」などの条件を全て受け入れた上で、金額だけ、わたしたちの提示した金額よりも3000ドル高い価格を要求してきたと、マーサが電話で伝えてきた。思っていたよりも安い金額だったので唖然としてしまい、用心に一旦電話を切ったものの、もうそれでいいよねとトリケラと顔を見合わせ、そのカウンターオファーを受け入れることにした。その数字がキリのいい数字ではなかったので、そのおまけの500ドルはなんだろうと思わないでもなかったけれども、一応、金額を大台に乗せたいオーナーの心理かもしれないと何となく納得。マーサに合意することを伝える際に、「あの家のデコレーションが気に入って、壁にかけてある絵のうちの一つでももらえたら嬉しいんだけど」と言い添えておいた。付属品込みで値段の交渉をすることもあるみたいだけれども、マーサの考えではそれはオファーの内容に含めないほうがよいということだったので、気に入った絵を二つだけ指定しておいて、あとはオーナーの好意に委ねることになった。
 今にして思えば、300日も売れていない物件だったし、他に競合する買い手もいなかったし、もっと値切れたかも。

  • Interest Rates and Loan Discount Points

 オファーの内容に双方が合意して、ファックスを利用して書類の金額等の訂正部分に双方がサインしたところで、under contractという状態になった。家の値段が確定したこの時点で、さて、ローンの申し込みの作業に入る。今度はモーゲッジブローカーのスティーブとのやりとり。チャペルヒルの彼のオフィスで直接会って話したときに、参考にということで見せられたチャートでは、彼が提供できるベストの金利は、5.75%(0.5ポイント)だった。(ポイントというのは、”ローン・ディスカウント・ポインツ”のことで、売買契約成立時に前払いする利息を指す。前倒しで利息を払うことで、ローン全体の金利を下げることができる。1ポイントはモーゲッジの金額の1パーセントになる。例えば$100,000のモーゲッジで2ポイント払うと$2,000。頭金、諸手数料のほかにこの現金が必要になるが、手持ちのお金に余裕がない人、または購入する家に2,3年しか住まないことがわかっている人などはポイントを低くするか、払わないで済むタイプのローンを選ぶとよい。)自宅でインターネットで現在の金利をチェックしたときにもっと低い数字がでていたので「あれ?」と思ったけれども、その時点ではまだ正式なローンの申し込みではなかったので、聞き流していた。
 さて、本当に申し込みをする段階になって、まだスティーブは5.75%と言っている。散々、今までのやりとりで、「この家は5〜7年、もしくはそれ以上住むつもりの家なので、ポイントを多く払って金利を下げたい」意向を伝えているのに。仕方ないので、「ネットのこれこれのページで見ると、アヤシイところで5.0%、一番多くでている種類では5.25%が出ているけど、5.75%というのは、本当にあなたが提示できるベストなプランなの?」と問いただした。
 ここで対応を間違うと、今まで手間隙かけて世話してきた客が、金利の高さに逃げてしまい、一ドルも稼げない状況に陥ってしまうのでスティーブは慌てた。(ブローカーは売買契約が成立して初めて、この契約にかかわってきたことに対する報酬を得ることができる。「その金利は高すぎるので、アタシタチは自分で見つけたもっといい金利の銀行から借金することにしたワ」といって逃げられてしまうと、それまでの労力はただ働きに終わってしまう。)「ネットで低金利をうたっている業者はいかがわしいんだよ。その金利は客寄せの見せかけ。僕は2ポイントで5.25なら出せる。」との返事。ポイントが違うので最初の5.75%と5.25%を比較することには意味がない。けれども多めのポイントを払ってでも金利を下げたいというわたしの意見を理解せずにスティーブは5.75%を提示しつづけていたので、低い金利を得るためにポイントが高めのプログラムを出すようスティーブのお尻をひっぱたいたわけ。思うに、5.75%(0.5ポイント)は、一番スティーブにとっておいしいローンのプログラムだったのだろう。この期に及んでわたしたちがスティーブが持ってくるローンの契約をしなかったら困ってしまうので、最後には5.625%(0.5ポイント)もしくは5.5%(0.75ポイント)という数字を出してきた。

  • Lock

 この金利は、60日間Lockロックするという条件のもの。一番ポピュラーなのは30日間ロック。ロックというのは、ローンの申し込みの時点の金利を一定の期間保証すること。金利と言うのは毎日変動してしまうので、ローンの申し込みから実際に契約が有効になる時点までに時間の開きがあると、その二つの時点での金利に差が出るのは珍しいことでも何でもない。今は金利が上昇傾向にあることが明らかなので、申し込み時の金利にロックしておけば、契約時に金利が高くなっていても、申し込み時の低い金利のままのローンが組めるというわけ。その融通の代償として、ロックした場合の金利は、だいたい 0.125%高く設定されているとのこと。契約成立時に金利が申し込み時とかわっていなかったり。0.125%よりも少ない幅でしか上昇していなかったら、ロックして損をしたことになる。ただし現在の金融市場の動向で、2ヶ月も時間が経過するなら、ロックしたほうが安全だという判断になった。

 わたしたちは家を購入する場所と離れているので、ローンの申し込み書類はスティーブが速達で送ってくれることになっている。モーゲッジを申し込むのには大量の書類にサインをするということで悪名高いけれども、さてさて、どれほどの苦行になることやら。




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