木を切ったあとの切り株、ティラノがサッカーをできる程度に芝を生やすためにはじゃまな存在。なのでStump grinding(木の根っこの地表に近い部分を細かく砕いて平らにしてくれる)サービスも依頼した。この作業をやってくれる人が夕方にやってきて、ガーゴー、騒音を鳴り響かせた。我が家と道路を挟まずに隣接する白い家のオーナーのでぶっちょおじさん、たまりかねて、耳を両手で塞いで家を出て散歩に出かけるパフォーマンスで不快感をアピール。実はこの隣家の住人、引越しの挨拶に行ったときには車2台とも駐車しているのに、応対せず、外にいるときに目があったのをチャンスに「ハロー」と言っても気づかなかったふりをするシャイな人たち(夫婦)だ。業者の人と私の姿が見えるときに、わざわざ散歩にでかけたので、”これはシャイな彼なりの最大限の主張なんだな”と思った。うちの向かいの2軒で木を切っていたときには、別に近所に挨拶とかしてなかったけど、わたしはどうすべきかと考えていたところだった。これはもう、手土産もってご挨拶に行くしかない、ということで、根元粉砕作業が終了する前にお花とワインを買いに走って、隣家を訪問した。
この家は前にも何度か訪問したけど、車が2台駐車してあって誰かしら在宅だということが明白でも無視されてきた。でも今日は引き下がるわけにはいかない。わたしと子供達でとりあえず正面玄関をノック。さっきまでついていた電気がサッと消された。でもめげずに、彼らが日常出入りする別の戸口へ向かった。それを中から観察していたのだろう、ドアまで近づく前に、でぶっちょおじさんは表へ出てきた。緊張しつつもアメリカ人の真似して「ハーイ!」と笑顔で、そして力強く右手で握手を求めたら、ブスッとしているかもと思ったおじさんは、意外と素直に応じてくれた。この家に引越してはや1年半、ずっとちゃんと挨拶しないで(挨拶するのを拒否されて)きた隣人と初めて正式に会うことができた。胸のつかえがとれたようで、本当に嬉しい。
「もう何日間も騒音が続いて本当に申し訳ない」といって話を切り出したら、おじさんは案外、普通の人だった(あんまりシャイなので微妙に変人系かと思ってたんだけど)。「きみんちは子供が3人いるし、もっとスペースがほしいのはわかるよ」とか「うちでも切らなくてはいけない木はあるしね」という理解あるご意見の合間に"God bless"を織り交ぜて、ちゃんとしゃべってくれた。花と赤ワイン(これが仲良くなるきっかけだと思って、売り場で一番高い鉢とフランス産のワインを選んだ。スーパーで売っているものだから高が知れているけれどサ)を手渡したら、「ビューティフル!こんなにしてくれて、ありがとう!」と笑顔のおじさん。互いに名乗り合って彼はニール、同じく太めの奥さんはマーシャだとわかって、ようやく隣人という関係が成立した。日本人にとってはおめでたい松を切ってしまうことの罪悪感でちくちくと苦しんだけれども、いいこともあるもんだね。塞翁が馬。