続編4

 夕食後は、またインスペクションのレポートの査読。このレポートを根拠に、今のオーナーに修繕のリクエストをすることになる。不動産屋さんのエージェントのマーサは、息子の大学の卒業を祝うのでしばらく仕事を休むということで、そのかわりに、お母さんが亡くなったということで担当をはずれていたヴィッキーが復活して、世話をしてくれることになった。ヴィッキーが、修繕をリクエストする項目のリストを送ってきてくれた。
 このインスペクションのレポートは理解するのに苦労する。実地にインスペクションの様子を見ていたわけではないので、「家の後方の一番左よりの、なんとかのかんとかの、なんとかいう部分に損傷があるので」とかって英語で書かれても、にわかには理解できない。ヴィッキーのリストと見比べながら何度かレポートを読むうちに、少しずつわかってくるような、わかったこないような・・・。
 ヴィッキーも経験を積んだエージェントで、いい人ではあるんだけれども、物事の考え方とか、要求のレベル、わたしの話を理解してくれる程度という意味では、マーサのほうがぴたっと合う感覚があった。
 インスペクションのレポートには、修繕費が大きくかかる欠陥から、将来のトラブルを未然に防ぐための注意の喚起、ちょっと不便だけれども大きな問題ではない欠陥、現在問題ではないけれども過去のトラブルのために木が傷ついている(腐っている)などの美的な問題など、いろいろなレベルの問題が指摘されている。どの程度の修繕をオーナーに要求するのが適当なのかは、こちらは経験がないのでわからない。マーサにその点、判断の基準はどうなっているのかを質問したら、ヴィッキーが、修繕の要求項目のリストを送ってきたという次第。
 どうも、問題らしい問題はほとんどすべて修繕をリクエストしていいみたい。(やってくれるかどうかは別問題だけど。)それならば、全部要求できるものは全部要求したほうがいいだろうと思い、そういう目でレポートの読み直し。
 ヴィッキーのリストでは、台所の換気扇が油汚れこってりなのはクリーニングを要求しようというのに、暖炉に著しく灰が蓄積されていて火災の危険があるという指摘があるのにもかかわらず暖炉と煙突の清掃はリストアップされていない。お母さんが亡くなった直後に仕事に復帰しているので、フルに機能することを期待するのは酷だと思うけれども、この状況は結構こちらに負担だ。ま、自分が住むことになる家だから、インスペクションの内容をきっちり理解しておいて、将来のリスクを把握しておいたほうがいいのだから、むしろヴィッキーに感謝すべきかな。
 それにしても築31年のこの家、建築当時と現在ではCodeコード(家屋の建築に関わる規則)が変わってきているので、現在の基準を満たさない項目がたくさんある。たとえば天井と壁と床に断熱材ないと指摘されているけど、そんな大きなプロジェクトはどうすればいいんでしょうねぇ。エネルギーの無駄を省くためには断熱が必要だと思うけど。