6/30のつづき

 数時間前に、シャトルの待合所へ行くために乗ったモノレールに再び乗り込んで、タクシー乗り場へ向かった。もう真夜中なのにタクシー乗り場には長い列。横断歩道の向こう側に列ができているけれども、こちら側でアフリカン・アメリカンの運転手が「タクシーあるよー」と声をかけている。みんなが無視しているところを見ると、イリーガルっぽい人なんだろう。こういう時は目を合わせないのが一番(気が弱いので、目があってしまうと、なんといって断ろうかと頭の中で英作文しはじめて、そうやっておどおどしている間に付け込まれてしまうのだ)。一生懸命に視線をそらして聞こえないふりをして横断歩道を渡った。その人ばかりでなく、なんだかアフリカン・アメリカンが多くて、夜中だし、知らない場所だし、なんかニューヨーク(の郊外の、のんびりした地域)で経験したことのないほどの怖さ。頭の中でビンビン警戒警報が鳴った。
 タクシー乗り場に行くと、行き先を確認して料金を算出してくれる男性が一人。町の名前とホテル名を告げると、運転手に支払うべき金額は$35と記入された紙を渡された。順番を待ってようやくタクシーに。自分で持っていていいはずのその紙を、運転手は「こっちへよこせ」という。ちょっと変だなぁと気になった。やはりアフリカン・アメリカンのその運転手さん、物の言い方がぼそぼそとしていて何をいっているのか、聞き取りにくい。夜中の仕事で嫌々働いているからなのか、不機嫌なのか、それとも単にそういう性格なのかわかんないけど、とにかく怖かった。トールブリッジを渡るので5ドル、その上、彼の帰り便の分までチャージされるので合計で10ドル、走行中に払った。その時のやりとりもぶっきらぼうで怖かった。
 30分ほどで目的地のマリオットホテルに到着。トリケラが料金を支払おうとしているときに、"xxxxxxx." 「ふぃふてぃふぁいぶ?」"Yeah." とかって言っている。ギョッとして、わたしは$35だろうと運転手に確認。なるほど、正規の料金が書いてある用紙を取り上げておいて、降りるときに確認できないようにして、ぼったくろうという作戦だったんだ。よかった、気をつけておいて。ひどいなー、一応はニュージャージー州の正規の運転手のはずなのに。
 ともあれ、とうとう本当に今夜の御宿についた。マリオットホテル、派手でも地味でもなく、上品に整えられていた。チェックインしたのは午前2時。せっかくのきれいなホテルもほんの数時間、横になっただけで、ゆっくり楽しむ時間もなく去らなくてはならないのね。こんなに大冒険しているのに、まだニューヨーク近辺にいるという事実を受け入れるのは容易ではない。はあ〜、まだこれから飛行機に乗るのかあぁ。もともとの予定では、引越し先のチャペルヒルにある、泊まりなれたホームウッズスイートというところでゆっくりワインでも飲みながらひっくり返っているはずだったんだ。ティラノは、「ノースキャロライナのホテルでは、朝7時半からテレビでデカレンジャーを見られる!」といって、それを楽しみにしていたんだ。テレビどころじゃなくて、大変な目にあっちゃったね、ティラノ。
 大体、明日もちゃんと飛行機が飛ぶのかわからないってんだから、参っちゃうよね。テレビで天気予報を見てる場合ではなかったので状況がよくわからないけど、外で降っている雨はしとしととした小雨。全便欠航になるような大嵐という実感はない。引越し屋さんは、わたしたちが到着して鍵を開けないことには、夏のノースキャロライナの屋外で、することもなく待ちぼうけをくってしまうことになる。明日の飛行機がまたキャンセルだってことになったら、一体どうすればいいんだろう?・・・・・。これ以上思い悩んでもしかたない、寝てしまおう。あぁ〜、ベッドに横になれてうれし〜。
(つづく)




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